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2025年7月4日(金)、慶應義塾大学日吉キャンパスにて開催された「第10回 クリニカルバイオバンク学会」は、「ゲノム医療の新たなフェーズにおけるバイオバンクの意義を考える」をテーマに、多様な専門家が集い、先端的な知見を共有する貴重な場となりました。
本学会は、臨床バイオバンクを活用した医学研究の加速に貢献するための最新動向を議論する場として毎年開催されており、第10回の節目を迎えた今回は、リアルワールドデータ(RWD)や医療データの信頼性確保に焦点が当てられました。
国内外の研究者や企業が、データ利活用における課題と可能性について議論し、日本における精密医療の推進に向けたさまざまな取り組みが紹介されました。
会場には多くの医療機関関係者や製薬企業、行政担当者などが来場し、非常に活発な議論と情報交換が行われました。
NTTプレシジョンメディシンも、医療データ利活用の未来を切り開く取り組みを紹介すべく、本学会にてスイーツセミナーを開催いたしました。

スイーツセミナー
「リアルワールドデータの多施設統合解析を実現する Japan Precision-medicine Platform」
日時:2025年7月4日(金)16:20~17:00
座長:西原 広史(慶應義塾大学医学部 がんゲノム医療センター)
発表者:NTTプレシジョンメディシン株式会社 稲家 克郎/新医療リアルワールドデータ研究機構株式会社 岡田 昌史/BC Platforms今堀 逸太郎
冒頭では、座長を務めた西原教授より、新たな医療データ流通の仕組みに期待される可能性についてのご紹介と、各登壇者のご紹介があり、その後、各発表へと進みました。

「Japan Precision Medicine Platform(JPP)の概要と目的」

稲家は、JPPがめざすビジョンと技術的な全体像について紹介しました。現在95%が未活用とされる医療データの二次利用に向け、JPPはTrusted Research Environment(TRE)とフェデレーション解析モデルを組み合わせた安全な研究環境を提供しています。
発表では、電子カルテ・健診・レセプトなど多様なデータを統合し、施設をまたいでの研究を可能にするユースケースを紹介。JPPが、創薬支援や希少疾患のコホート解析など多様な研究目的に応じて柔軟にデータ利活用を支援できることが示されました。

「医療データ活用における課題と信頼できる研究環境(TRE)の意義」
岡田医師は、電子カルテ(EHR)やレセプトの構造的な制限や情報欠損の課題を指摘し、医療研究の現場で求められるデータ品質について言及。
その解決策として、患者データを匿名化せず、安全な環境下で活用する「Trusted Research Environment(TRE)」と「連合解析(Federated Analysis)」の必要性を強調しました。
具体的には、個別データを移動させずに施設内に保持しつつ、外部研究者が仮想環境を介してアクセス・解析できる構成の利点が説明され、プライバシー保護と研究推進の両立を実現するアプローチが示されました。

「AI時代に対応したユースケースとTREの展開事例」

今堀氏は、BC Platforms社が提供するグローバル規模のデータプラットフォーム技術と、AI時代におけるRWD活用の進化について講演しました。
特に、NHS(英国保健省)やシンガポールの精密医療国家プロジェクト、欧州のがん研究プロジェクトにおける活用事例が紹介され、AI・LLM(大規模言語モデル)を用いた解析が、どのように各国の医療研究と治療開発を加速させているかが具体的に示されました。
また、日本においてもNCGM(国立国際医療研究センター)との連携を通じて、全国規模での希少疾患研究やゲノム研究が進展しており、JPPとの技術的連携がグローバルな医療イノベーションに直結していることが共有されました。

本セミナーでは、今後の日本における医療データ活用の標準モデルとなるべく、JPPが担う役割と、BC Platformsとの協働によるグローバルな実装例が多数示され、会場参加者からも多くの関心が寄せられました。
NTTプレシジョンメディシンは、今後も医療機関や企業、行政と連携しながら、より安全で実用的なデータ利活用基盤の構築を進め、日本における精密医療の発展に貢献してまいります。