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病気になって薬を飲んだとき、「よく効いた」と感じることもあれば、「思ったほど効かなかった」「副作用がつらかった」というご経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
薬の効き方や副作用の出やすさには、年齢や体重、肝臓・腎臓のはたらきなどに加えて、体の中で薬を分解・運ぶしくみの「個人差」も関係します。その個人差の一部に、遺伝子の違い(生まれつきの体質)が関わることが知られています。
Genovision PGxは、こうした遺伝的な傾向を調べ、薬の選択や用量を医師・薬剤師と相談する際の参考情報として提供する検査サービスです。
※PGx(ファーマコゲノミクス/薬理ゲノム学):遺伝子の違いによる「薬の効き方・副作用」の個人差を、医療に役立てるアプローチ

日本が直面する社会課題:超高齢社会と医療費
日本は高齢化が進んでおり、65歳以上人口の割合(高齢化率)は約3割と推計されています。高齢化の進展に伴い、医療・介護を含む社会保障費の増加が課題となっており、医療の質を保ちながら効率も高める取り組みが求められています。

実は、薬は誰にでも同じように効くわけではありません
病気になったとき、私たちは多くの場合「薬」に頼ります。実は、同じ薬でも、すべての人に同じように効くわけではありません。一定割合の方では期待した効果が得られなかったり、副作用のために薬の変更・中止が必要になったりします。
米国の論文では、治療領域ごとに異なりますが、下図の通り「薬が有効と判定される患者」は25〜80%、平均すると約50%前後と報告されています。

なぜ、同じ薬で結果が分かれるのでしょうか
・薬を分解する力(代謝酵素)の個人差
・薬の標的(受容体・感受性)の違い
・副作用の出やすさの違い
が影響し、これらの違いには、遺伝子が一因として関わっている、と言われています。
たとえば、お酒で顔が赤くなる人・ならない人がいるのと同じで代謝能力などに遺伝的な個人差があるのです。

薬の個人差に関わる主な遺伝子
薬の個人差が生じるメカニズムについて、簡単にご説明すると、薬は体内で「吸収・分布・代謝・排出」というプロセスをたどります。薬を飲んだ後、小腸で吸収され、血液をめぐって患部に届き、肝臓で代謝されて、尿として排出されるのです。その各プロセスにおいて、遺伝的な個人差があり、薬の効き方や副作用の起こりやすさに影響します。
従来医療の課題とPGxによる個別化医療
従来の医療では、「第一選択薬を使用し、効果や副作用を見ながら調整する」という、試行錯誤型の投薬アプローチが一般的でした。第一選択薬は、統計的に、多くの方に効果を発揮するよう選定されていますが、それでも前述の通り、一部の方には期待ほどの効果が得られないことがあります。
これに対し、近年、PGxという、 遺伝的体質を治療判断の参考情報として活用し、 薬の効きやすさや副作用の傾向を事前に把握するアプローチに注目が集まっています。

欧米では、徐々にPGxの社会実装が進みつつあります
欧州では、PGxを実際の医療現場にどう実装するか、という観点で約7,000名規模の大規模な臨床実装研究が行われました。
この研究では、事前にPGx検査を行い、その結果を処方判断に反映することで、多くの患者が、将来的に遺伝情報を薬物治療に活用できる可能性が示されました。特に重要なのは、患者の約9割が、処方に影響しうるPGx変異を持っていたという点です。そして、PGxの推奨に基づき薬剤変更や用量調整された患者は、標準用量を処方された患者より
副作用リスク(オッズ)が30%少なかった、という効果も報告されています。
一方、米国ではすでにPGxは商用フェーズに入っています。民間保険の適用が広がっていることも背景に、ある検査サービスでは累計300万件規模でPGx検査が利用されているそうです。検査費用は330ドルかかる一方で、医療費が平均1,000ドル程度低減したという報告があり、結果として医療経済性の観点でも有用性が示唆されています。

一方、日本では、まだ制度・運用上の制約があります
一方、日本では、診療現場でのPGx検査はまだ一般的とは言い切れず、健康保険適用で実施できる検査項目は一部に限られています(2026年5月現在、3薬剤のみ)。薬の添付文書に「遺伝子型に応じて用量調整することが望ましい」と記載されていても、検査体制や運用の制約から、必要なときにすぐ実施できない/実施されにくいケースがある点が課題として指摘されています。

日本でのPGx検査サービス普及に向けて~Genovision PGx サービス提供~
こうした課題を踏まえ、NTTが出資している国内有数の遺伝子解析企業であるジェネシスヘルスケアと連携して、当社が4年半かけて開発したサービスがGenovision PGxです。

理化学研究所が開発したターゲットシーケンスパネル「corePGseq」の特許のライセンス提供を受け、18種類の薬剤応答関連遺伝子を解析します。結果として、約70種類の薬剤に対するPGx情報を提供することが可能です。
検査結果レポートでは、対象薬剤ごとに「使用には注意が必要(用量調整や副作用リスクの考慮が必要な可能性)」と「指示に従って使用(通常の用法・用量で問題が起こりにくい可能性)」のように区分し、主治医と相談する際の参考情報として提供します。レポートの解説には、日本薬理遺伝学臨床実装コンソーシアム(JCPIC)が作成した内容を引用しています。これはCPICなどの国際的な標準、日本の医薬品添付文書、診療ガイドライン、薬理遺伝学の関連ガイドライン等の十分なエビデンスのある情報をもとに、日本の医師が監修し、2年かけて作成したものです(当社もメンバーです)。
さらに、本サービスではfirstcall for Genovision を通じて、遺伝学的検査アドバイザー相当の知識を有する医師とのオンライン面談やチャット相談を提供しています。受検者の利用は無料で、「結果をどう理解すればよいか」「この結果を踏まえて、主治医に相談すべきか」といった疑問をサポートします。
Genovision PGxは、薬を「試してみるもの」から、「ご自身の遺伝的な特徴を理解した上で、医師・薬剤師と相談して選ぶもの」へと変えていくことを支援するサービスです。遺伝情報は原則として生涯変化しないため、一度の検査結果を一生の薬物治療の相談に活用できます。いざというときに慌てないため、健康なうちにご自身のPGxを確認してみませんか?
私たちは、効果不足や副作用で薬の調整が必要になる状況を「50%の壁」と捉え、その壁を少しでも超える医療の実現をめざして、PGxの社会実装に取り組んでいきます。
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免責事項
・本記事は、薬理ゲノム学(PGx)および遺伝子検査に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医療行為を推奨するものではありません。
・Genovision PGxの検査結果は、薬の選択や用量の検討における参考情報の一つであり、疾患の診断や治療効果・副作用の発現を保証するものではありません。
・実際の治療方針や服薬の変更は、症状、既往歴、併用薬、検査値等を踏まえ、必ず医師・薬剤師にご相談のうえ判断してください。自己判断で服薬を中止・変更しないでください。
・急な体調変化や強い副作用が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
・本記事の内容は執筆した2026年5月時点の情報に基づいており、予告なく変更される場合があります。
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